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遺伝子検査について

遺伝子検査に関する法律

「ゲノム薬理学を適用する臨床研究と検査に関するガイドライン」

1.ゲノム薬理学(Pharmacogenomics; PGx)、薬理遺伝学(Pharmacogenetics; PGt)とは

ICH(日 米EU医薬品規制調和国際会議)、厚生労働省によると、ゲノム薬理学は薬物応答と関連するDNAおよびRNAの特性の変異に関する研究であり、薬理遺伝学 は、ゲノム薬理学(PGx)の一部であり、薬物応答と関連するDNA配列の変異に関する研究である。本ガイドラインの中でもこの定義が説明されている。


2.ゲノム薬理学の現状

ゲノム薬理学は研究のレベルから臨床応用のレベルへと急速に進歩してきた。例えば、抗癌薬イリノテカンの副作用を予測するためのUGT1A1の遺伝子検 査、白血病治療薬イマチニブの治療効果を予測するためのBcr-Abl遺伝子検査、肺がん治療薬ゲフィニチブの効果を予測するためのEGFR遺伝子検査、 結腸・直腸がんのセツキシマブ治療に関するK-Ras遺伝子検査などは保険収載され用いられている。それらに加え、カルマバゼピン、アロプリノールなどの 副作用とHLA遺伝子との関連は医薬品の添付文書に書かれている。 以上のように、我が国でも使用可能なゲノム薬理学検査は多いが、実際には倫理問 題の所在を含め、それぞれの内容の理解が十分ではないため、その使用は限られている。あるいは、ゲノム薬理学に特化したガイドラインが、一部を除き存在し ないため、ゲノム薬理学検査の使用を躊躇する例も多いと考えられる。そのため、多くの患者が不利益を受けていると推定され、無駄な医療費の使用が行われて いると推定される。 更に、乳がん治療薬の効果を予測する遺伝子発現情報解析など、海外では用いられているが日本では保険収載されていないゲノム薬理学検査も多い。 研究レベルのゲノム薬理学は非常に数が多く、今後続々と臨床に登場する可能性が高い。


3.ゲノム薬理学研究・検査の分類

ゲノム薬理学研究・検査は(1) 生殖細胞系列情報の研究・検査、(2) 体細胞変異の研究・検査、(3) 遺伝子発現情報の研究・検査、に分類される。ヒトゲノム・遺伝子特有の倫理問題等が存在する可能性があるのは(1)の生殖細胞系列情報であり、これは世代 を超えて伝えられる情報である。(1) 以外の研究・検査については通常の臨床検査と同様の取り扱いが適当である。 前記のUGT1A1遺伝子、HLA遺伝子の検査は(1)、Bcr-Abl遺伝子、EGFR遺伝子、K-Ras遺伝子の検査は(2)、乳がん治療薬の効果を予測する遺伝子発現情報解析は(3)に属する。


4.ゲノム薬理学研究・検査と遺伝学的研究・検査の違いと、本ガイドラインの基本方針

しばしば行われている遺伝病などの生殖細胞系列の遺伝学的研究・検査では、遺伝型の結果として生じる表現型を避ける事が困難である事がほとんどである。し かし、ゲノム薬理学研究・検査の場合は生殖細胞系列情報であっても、遺伝型の結果として生じる表現型を避ける事が可能である。即ち、薬物の服用の回避、別 の薬物の選択により「効果なし」「副作用」などの表現型を避ける事が可能である。従って、後者では倫理問題の程度が格段に低い。ゲノム薬理学検査・研究に おいては健康障害を伴う単一遺伝子疾患が考えられる場合を除いて、通常の臨床検査と同様の取り扱いで良い、というのが本ガイドラインの基本的方針である。


5.今回のガイドラインのカバーする範囲

(1) 保険診療と先進医療に関連したゲノム薬理学検査
(2) 治験、製造販売後臨床試験以外の臨床研究(GCP適用外)で実施するゲノム薬理学研究
(3) 治験、製造販売後臨床試験(GCPが適用されるもの)に関連したゲノム薬理学研究
をカバーする。親子鑑定、体質検査など一般市民を対象としたゲノム薬理学研究・検査は対象としない。


6.今回のガイドライン発表により期待される効果

(1) ゲノム薬理学、遺伝薬理学の概念の周知を図る事ができる。
(2) ゲノム薬理学研究・検査の3つの分類の周知を図る事が出来、遺伝子特有の倫理問題の所在する部分を明確にできる。
(3) 保険診療や先進医療で用いられる遺伝子検査について、分類、内容、問題の所在、指針などが解らないため使用をためらう医師が正しい使用を行うための補助となる。
(4) GCPの適用されないゲノム薬理学研究について、分類、内容、問題の所在、指針などが解らないため使用をためらう研究者が、正しい使用を行うための補助となる。
(5) GCPの適用される治験、製造販売後臨床試験(GCPが適用されるもの)に関連したゲノム薬理学研究について、分類、内容、問題の所在、指針などが解ら ないため使用をためらう研究者や企業が、正しい使用を行うための補助となり、我が国が諸外国との新薬開発競争において遅れを取る事を防ぐ事が出来る。
(6) 医学、薬学、臨床検査学の3分野の学会が合同で発表するため、多くの分野の人々の指針となる事が期待される。
(7) ヒトゲノム・遺伝子解析研究のための指針や、遺伝病を中心とした遺伝学的検査のガイドラインがあるにもかかわらず、ゲノム薬理学に特化したガイドラインが必要な理由が理解できる。